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ハードウェアスタートアップはモノづくりをしていてはいけない


スポーツ用ウェアラブルデバイスの開発中のスタートアップを立ち上げました。

先日のサッカーワールドカップで試合ごとのヒートマップや平均ポジショニングのデータが配信されていましたが、あれをもっと簡単に実現出来る方法を、世界中のサッカー選手に届けようとしています。

いわゆるハードウェアスタートアップなので、Arduinoなどで機能確認をしながら、実機を実装してはテストを行なっています。しかし、ここ最近「ハードウェアスタートアップはモノを作ってはいけない」と考えるようになってきました。

これまでのメーカーのモノづくりは、大量生産でコストを下げる方法を取ってきました。そのため、多くの人に受ける製品開発が必要で、開発の長期化と多機能化、マスマーケティングは不可避でした。そのため、資金面でリーンなスタートアップが参入するには難しい領域でした。日本のモノづくり、つまり製造業が優秀なのは周知の通りですが、このモデルではニーズの変化速度への対応が難しく、製品開発が終わった頃には競合がひしめく市場に後発として参入する状況でした。

ところが、2009年と2014年に重要な特許が期限切れとなり、3Dプリンティングが爆発的に広がり始めました。(もちろん別の要因も多分にありますが)メーカーズブームの到来です。一般プレイヤー、異業種プレイヤーの参入が始まりました。大量生産されたものではなく、自分たちのニーズやアイデアを自分たちで作ろう的な流れです。少量多品種、ニッチニーズを狙ったスタートが可能になりました。簡単に出来るようになった分、3Dプリンターでいろいろ作り始めちゃう人も出てくるのですが、それは別の話題です。

日本のハードウェアベンチャーの1つがCerevo社です。つい最近、Cerevo社の人員体制の拡充で話題になり、元さくらインターネットの小笠原治さんが取締役に就任し、迅速な意思決定のもとに事業を進めると記事が出ていました。経営判断を早くすることで、ニーズを逃さず、キャズムを越えなくとも利益をあげられる経営体制を作ることが目的のようです。ニッチニーズを的確に捉え、適切な顧客を囲い、利益率の最も高くなるポイントを見据えながら適量生産を行うことが、1つの勝ちパターンになっていきそうです。

しかし、いくらハードルが下がったとはいえ、スタートアップのビジネスモデルとしては、まだ難度が高いです。そこで言われているのが、IoT、モノのインターネットです。モノに通信機能を持たせること、と捉えても良いかも知れません。この本質は、新しいハードウェアを普及させるのはハードルがかなり高い、ということです。逆に言えば、既に普及しているハードウェアはそれらの関門を突破してきた精鋭だと考えることができます。

そこで、スタートアップの戦略として既存のハードウェアをRe-Hackしたソフトウェア開発が考えられます。ソフトウェア開発の領域にはリーン・スタートアップモデルを適用しやすいからです。ハードウェアは1度販売してしまうと、改修・改変・保守のためにユーザの手元から回収するのはコスト的に困難だからです。従って、ソフトウェアに比べ開発期間が長く、ユーザからのフィードバックを得るまでに時間がかかります。だからこそ、既存のハードウェアをRe-Hackし、資金体力の乏しいスタートアップとしソフトウェア的なアプローチである程度道筋ができたら、次のステップを考えます。

次のステップでようやく、ハードウェアを開発・販売を考えます。自分たちが作ったソフトウェアとシナジーが高いことが重要です。ただし、競合または協業相手がすでにいる中での展開になるので、このステップは少し難しいかもしれません。もしかしたら、1つ前のステップとこのステップは、同時に進める方が良いかもしれません。その点で、Moff社はモーションセンサーという既存コンポーネントの再構成をベースに、センシングデータのプラットフォームを構築していて、的確にこの流れを捉えています。その他、Chromecastは既存のコア・ハードウェアにアドオンしていて、中間的な存在として非常に面白いと思います。

そして、最後に考えておくステップは、1つのハードウェアに対して、いくつものソフトウェア的なソリューションの準備です。ハードウェア自体の製品寿命も伸ばせますし、変化が早く幅広いニーズにも対応できるからです。もしかすると、ハードウェアの開発は期間と予算の上限を設定してコストを一定範囲に抑制しながら、ソフトウェア側での採算を考える必要があるかもしれません。全てうまく進んだら、の前提ですが。

これからのハードウェアスタートアップはモノづくりをしていてはいけない、と思います。

ハードウェアスタートアップは宿命として「次のソリューション」を用意しなければ生き延びることができないからです。売れなければアウトです。いくら敷居が下がったとはいえ、「いままでの製造プロセスに比べれば」というだけです。新しいものを作りたくなる欲求もありますし、作れたらすごく楽しいです。ただ、ほとんどのスタートアップが資金的、人的にも恵まれている状況ではないと思います。既存のモノをハックし直すことでモノを進化させることが「ハードウェアスタートアップ」のリーンな姿なのだと感じています。これからハードウェアスタートアップをしたい人は、新しいハードを作ることだけに情熱を傾けるのでなく、ぜひ”Re-Hack”を考えてみてください。

個人的には、Moff社の”次”が気になるところです。新しいハードウェアを開発するのか、Moffをベースに新たなソフトウェアを開発するのか、です。それと、掃除機で有名なDyson社は、空気の流れをずっと研究している企業で、ファンの見えない扇風機を販売していましたが、あれも既存製品のRe-Hack的なソリューションだと思いますが、スタートアップではないのでちょっと違いますね。また、Cerevo社のように、ニッチニーズのマーケットに対して多品種少量生産で製品を提供し続けるモデルも興味があります。”当たり”が出るまで様々なコンセプトでハードウェアを出し続けるのか、1つのハードウェアを軸にソフトウェア的展開を考えるのか。

さて、Up performa はこれから開発をどんどん加速します。2018年のサッカーワールドカップ、2020年東京五輪、2022年のサッカーワールドカップでは日本が大活躍できる一助にしていきたいと思います!!

株式会社アップパフォーマ
IoTを中心に製品を開発・販売するベンチャー企業です。2014年7月に京都市で設立し、「見えなかったものを見えるように、もっと分かりやすく、世界を鮮やかに」をスローガンに、現在はスポーツ用ウェアラブルデバイスとソフトウェアを開発中です。
(公式サイト:http://upperforma.com